アメリカ南東部、アパラチア山脈の豊かな森の中を流れる「チャトゥーガ川(Chattooga River)」。
ノースカロライナ州に源を発し、サウスカロライナ州とジョージア州の州境付近を流れるこの川は、深い森や岩壁、急流など、手つかずに近い自然が残ることで知られています。
そしてチャトゥーガ川には、もう一つ興味深い顔があります。
実は、1972年に公開された映画『Deliverance(脱出)』の撮影地としても知られているのです。
今回は、自然と歴史、映画文化が交差するチャトゥーガ川の魅力を見てみましょう。
チャトゥーガ川はどこを流れている?
チャトゥーガ川は、アメリカ南東部のノースカロライナ州にあるアパラチア山脈の山地を源流としています。
その後、南西方向へ流れ、サウスカロライナ州とジョージア州の境界を形成する区間があります。
川は最終的にタルラ川(Tallulah River)と合流してトゥーガルー川(Tugaloo River)へとつながり、さらにサバンナ川水系へ流れていきます。
つまり、山の中の一見静かな川ですが、その水はやがて大西洋へ向かって流れていくのです。
アメリカ魚類野生生物局によると、チャトゥーガ川は山間の小さな流れから始まり、約57マイルの指定区間を持つ川として紹介されています。
「ワイルド・アンド・シーニック・リバー」に指定された川
チャトゥーガ川を語るうえで欠かせないのが、**National Wild and Scenic Rivers System(国立ワイルド・アンド・シーニック・リバー制度)**です。
これは、優れた自然・景観・レクリエーション・地質・歴史などの価値を持つ川を、できるだけ自然な状態で守るための制度です。
チャトゥーガ川は1974年5月10日、約57マイルがこの制度の対象に指定されました。
指定された区間には、
ワイルド
シーニック
レクリエーション
という3つの分類があり、特にワイルドに分類される区間が多いことも特徴です。
アメリカ魚類野生生物局の資料では、指定区間のうち約41.6マイルが「Wild」、2.5マイルが「Scenic」、14.6マイルが「Recreational」とされています。
つまりチャトゥーガ川は、単に「きれいな川」というだけではありません。
自然そのものを残す価値が認められ、国によって保護されている川なのです。
急流だけではないチャトゥーガ川
チャトゥーガ川というと、カヌーやラフティングを思い浮かべる人も多いでしょう。
実際、この川はアメリカ南東部を代表するホワイトウォーターの川の一つとして知られています。
しかし、川の表情は急流だけではありません。
場所によっては、
静かに流れる水面
巨大な岩
深い淵
森に囲まれた川岸
急な瀬や滝
岩壁に挟まれた渓谷
など、さまざまな風景を見ることができます。
アメリカ魚類野生生物局も、チャトゥーガ川について、静かな流れから激しい急流、巨大な岩、深いプールまで変化に富んだ景観を紹介しています。
特に秋になると、アパラチア山脈の森林が赤や黄色、オレンジ色に染まり、川沿いの風景も大きく変化します。
水の流れと森林の色が組み合わさることで、季節を感じられる美しい景観が生まれます。
映画『脱出』の舞台になった川
チャトゥーガ川を有名にしたものの一つが、1972年公開の映画『Deliverance(脱出)』です。
映画では、4人の男性がカヌーで大自然の川を下る物語が描かれます。
作品内では架空の「カフラワシー川(Cahulawassee River)」という名前が登場しますが、実際の撮影にはチャトゥーガ川が使われました。
アメリカ魚類野生生物局も、映画がチャトゥーガ川で撮影されたことを紹介しています。
また、アパラチア州立大学の資料でも、映画『Deliverance』がジョージア州のチャトゥーガ川沿いで撮影されたことが確認できます。
そのため、映画ファンにとっては「アメリカの美しい自然を代表する川」であると同時に、映画史にも登場する場所として知られています。
ジミー・カーター元大統領とも関係がある
もう一つ意外なのが、チャトゥーガ川とジミー・カーターの関係です。
カーターは自然を愛した人物として知られ、ジョージア州知事時代からチャトゥーガ川の自然環境を守ることに関心を持っていました。
アメリカ魚類野生生物局によると、カーターはカヌーでチャトゥーガ川を何度も訪れ、1974年にはブル・スルース急流(Bull Sluice)を2人乗りカヌーで下った最初の人物とされています。
そして同じ1974年、チャトゥーガ川はNational Wild and Scenic Rivers Systemに指定されました。
川を守る歴史の中に、後のアメリカ大統領が登場するという点も、この川のおもしろいところです。
「3つの州」に関係する川
チャトゥーガ川には、地理的にも興味深い特徴があります。
川の流域は、
ノースカロライナ州・サウスカロライナ州・ジョージア州
の3州にまたがっています。
特に川の下流側では、ジョージア州とサウスカロライナ州の境界を形成する区間があります。
さらに、3州が接する地域にはエリコット・ロック(Ellicott Rock)があります。
つまりチャトゥーガ川は、単なる州内の河川ではなく、アメリカ南東部の3州を結ぶように流れる川なのです。
なぜ「野生の川」として守られているの?
チャトゥーガ川の大きな特徴は、周囲に人工的な開発が少なく、自然に近い状態が残されていることです。
森林に囲まれた川岸には道路や建物が少なく、場所によっては人の手がほとんど入っていないような風景が広がります。
そのため、ハイキング、釣り、自然観察、写真撮影、キャンプなど、自然を直接感じるレクリエーションの場としても利用されています。
「Wild and Scenic River」という制度名の「Wild」は、単に川が荒々しいという意味ではありません。
自然の状態をできるだけ残すことそのものが価値になっているという意味なのです。
チャトゥーガ川を知ると「美しい川」の見方が変わる
チャトゥーガ川の魅力は、急流の迫力だけではありません。
アパラチア山脈の森林を流れ、3州に関わり、国の制度によって自然が守られ、さらに映画の舞台にもなった――。
一つの川の中に、
地理・地質・自然・アウトドア・映画・環境保護の歴史
が詰まっています。
特に興味深いのは、1972年の映画によって広く知られるようになった川が、その後も「野生の川」として自然環境を守られていることです。
観光地として整備された景勝地とは少し違い、チャトゥーガ川では、森林と岩と水がつくる自然そのものを感じることができます。
読者へのメッセージ
アメリカには、都市の近くにある有名な観光地だけではなく、森の奥深くで静かに流れ続ける川もたくさんあります。
チャトゥーガ川は、その中でも「自然を残すことには価値がある」という考え方を知ることができる川です。
映画の舞台として見るのも、アパラチア山脈の自然として見るのも、あるいは野生の川を守る取り組みとして見るのもよいでしょう。
もしアメリカの川を訪れる機会があれば、観光名所だけでなく、その川がどのような自然を残し、どんな歴史を歩んできたのかにも目を向けてみてはいかがでしょうか。
チャトゥーガ川は、そんな「川の背景」に興味を持つきっかけを与えてくれる場所なのです。
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