スーパーやコンビニで買い物をするとき、レジから聞こえてくる「ピッ」という音。
その瞬間、商品の価格や情報が読み取られ、会計へと反映されます。
その中心で活躍しているのが、商品のパッケージに印刷されたバーコードです。
黒と白の線が並んでいるだけに見えますが、そこには商品を識別するための情報が組み込まれています。
10月7日は、そんなバーコードの歴史を振り返る「バーコードの日」。
実は現在のようなバーコードが生まれるまでには、意外な発想と長い年月がありました。
バーコードの日はなぜ10月7日?
10月7日が「バーコードの日」と呼ばれるのは、1952年10月7日に、ノーマン・ジョセフ・ウッドランドとバーナード・シルバーによるバーコードの基本的な発明について、アメリカで特許が成立したことに由来します。
特許となったものは、現在スーパーなどで見かける横長の縞模様とは異なり、同心円状の「ブルズアイ」と呼ばれる方式でした。
つまり、10月7日は「現在のバーコードがその日に完成した日」というより、バーコードにつながる重要な発明が特許として認められた日と考えると分かりやすいでしょう。
バーコードは「レジの行列」から生まれた
バーコードの発想が生まれた背景には、スーパーマーケットでの会計作業がありました。
商品が増えれば増えるほど、レジでは商品の情報を一つひとつ確認する必要があります。
そこで求められたのが、商品を機械で自動的に識別する方法でした。
この課題に取り組んだのが、大学院生だったウッドランドとシルバーです。
2人は、情報を機械で読み取る方法を研究し、バーコードにつながる仕組みを考案しました。
ウッドランドはモールス信号の考え方からヒントを得たとされ、1948~1949年ごろ、砂浜に線を引くようにしてアイデアを思いついたというエピソードも残っています。
「商品を機械に読み取らせる」という発想が、砂浜に描いた線から始まったと考えると、身近なバーコードが少し違って見えてきます。
最初のバーコードは「縞模様」ではなかった
ここはバーコードの歴史で特に興味深いところです。
現在のバーコードといえば、縦方向に黒と白の線が並んだ形を思い浮かべます。
ところが、ウッドランドとシルバーが特許を取得した方式は、円形の線が何重にも並んだ形でした。
これは「ブルズアイ型」と呼ばれる方式です。
見た目は現在のバーコードとはかなり違います。
しかし、
「商品に識別情報を持たせ、それを機械で読み取る」
という基本的な考え方は、現代のバーコードにつながっています。
発明されたアイデアが、そのまま現在の形で実用化されたわけではないところも、バーコードの面白いところです。
特許ができても、すぐには普及しなかった
バーコードの基本的な発明が特許になったのは1952年。
しかし、そこからすぐにスーパーのレジでバーコードが使われたわけではありません。
当時は、バーコードを高速かつ正確に読み取るための技術が十分に整っていませんでした。
その後、レーザーによる読み取り技術やコンピューター技術の発達によって、バーコードは実用化への道を進んでいきます。
そして1970年代に入ると、現在につながる商品用バーコードの仕組みが大きく進展しました。
1973年には、アメリカの食品業界を中心に統一された商品コードの仕組みが作られ、現在のUPCにつながるバーコードが整備されました。
世界で初めてバーコードを読み取った商品は?
バーコードの歴史を語るうえで、もう一つ有名なのが「世界で初めてスキャンされた商品」です。
それは、アメリカのスーパーマーケットで販売されたウィリアム・リグレー・ジュニア・カンパニーのジューシーフルーツ味のチューインガムでした。
1974年6月26日、オハイオ州トロイのマーシュ・スーパーマーケットで、このガムがバーコードによって読み取られました。
つまり、バーコードによる商品管理の歴史は、巨大な家電製品でも高価な機械でもなく、小さなチューインガムから始まったことになります。
現在では当たり前になった「商品をレジでスキャンする」という光景にも、こんな最初の一歩がありました。
バーコードの黒い線は、ただの模様ではない
では、なぜバーコードを読み取ると商品が分かるのでしょうか。
バーコードは、黒い線と白い部分の幅や配置を一定のルールで組み合わせることで、数字などの情報を表現しています。
レジのスキャナーなどがそのパターンを読み取り、対応する商品情報をコンピューター側で照合します。
そのため、バーコードそのものに「この商品は○○円」とすべての情報が書かれているわけではありません。
商品を識別するためのコードと、コンピューター側の商品データが結び付くことで、レジでは商品名や価格などを表示できます。
一見すると単純な縞模様ですが、実際には**「機械が読める情報」に変換された記号**なのです。
日本でおなじみの「JANコード」
日本の商品パッケージでよく見かけるバーコードは、JANコードです。
JANは「Japanese Article Number」の略で、日本国内の商品識別に使われています。
海外ではUPCやEANなど、地域や用途に応じた規格が発展してきました。
これらはバラバラに存在しているわけではなく、現在はGS1の国際的な標準体系のもとで、商品や物流などの識別に利用されています。
スーパーで買い物をするときには意識することがありませんが、世界各地の商品流通を支える共通のルールとして、バーコードは重要な役割を果たしています。
バーコードはレジだけで使われているわけではない
「バーコード=スーパーのレジ」というイメージが強いかもしれません。
しかし、実際には商品を識別する仕組みとして、さまざまな場所で活用されています。
たとえば、
商品の在庫管理
倉庫での入出荷管理
物流での荷物の識別
図書館での資料管理
医療分野での識別管理
チケットや会員情報の管理
などです。
レジで「ピッ」と読み取る場面は、バーコードが活躍する場所の一部にすぎません。
物が大量に動く現代社会では、人が一つひとつ確認する作業を減らし、機械による正確な識別を可能にする仕組みとして重要な役割を担っています。
バーコードからQRコードへ
現在は、バーコードだけでなく、スマートフォンなどで読み取るQRコードも身近になりました。
一般的なバーコードが横方向に情報を表現する一次元コードであるのに対して、QRコードは縦と横の二方向に情報を配置する二次元コードです。
そのため、より多くの情報を扱えるという特徴があります。
ただし、QRコードがバーコードを完全に置き換えたわけではありません。
商品の流通管理などでは、現在もバーコードが広く使われています。
「バーコードからQRコードへ」というより、用途に応じてさまざまなコードが使い分けられるようになったと考えると分かりやすいでしょう。
今日の買い物で「ピッ」を探してみよう
普段の買い物では、バーコードをじっくり見ることはあまりありません。
けれど、商品を手に取って裏返してみると、そこには小さな黒と白の線が並んでいます。
その数本の線の中には、商品を識別するためのルールが組み込まれています。
そしてレジに持っていけば、ほんの一瞬で読み取られます。
1952年に特許となった発明が、レーザーやコンピューターなどの技術と結び付き、現在の流通システムの一部へと成長していったのです。
読者へのメッセージ
バーコードは、普段の生活では「商品の裏にある黒い線」として見過ごしてしまいがちな存在です。
でも、その誕生をたどってみると、レジでの作業を効率化したいという課題から始まり、砂浜に描かれた線のアイデア、円形のバーコード、そして現在の縞模様へと発展してきた長い歴史があります。
10月7日の「バーコードの日」には、買い物のときに商品を一つ手に取って、パッケージのバーコードを少し眺めてみるのもよいでしょう。
いつも何気なく見ている縞模様が、**世界の流通を支える小さな「情報の入り口」**に見えてくるかもしれません。
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