本屋に足を踏み入れた瞬間、ふわりと漂う独特の香り。
新品の本を開いたときに感じる、あの少し甘くて清潔感のある匂いに、思わず深呼吸した経験はありませんか。
「本の匂いが好き」という感覚は、実は単なる気分や思い込みではありません。
そこには化学的な理由と、人の脳の仕組みが深く関係しています。
新品の本の匂いの正体は「揮発性有機化合物(VOC)」
新品の本の匂いは、インク・紙・接着剤などの素材から発生する
**揮発性有機化合物(VOC:Volatile Organic Compounds)**によるものです。
具体的には、以下のような要素が組み合わさっています。
印刷インクに含まれる溶剤成分
**紙(パルプ)**の製造・加工工程で残る化学物質
**製本用の接着剤(糊)**に含まれる成分
これらがごく微量ずつ空気中に放出され、人の嗅覚に届くことで、「新品の本らしい香り」が生まれます。
つまり、本の匂いは偶然ではなく、素材の集合体が生む必然的な香りなのです。
なぜ「心地いい」「落ち着く」と感じる人がいるのか
新品の本の匂いに対して、多くの人が「安心する」「リラックスできる」と感じる理由は、
嗅覚と脳の関係にあります。
嗅覚は、五感の中でも特に珍しく、
感情や記憶を司る大脳辺縁系に直接働きかける感覚です。
そのため、本の匂いは次のような体験と強く結びつきやすくなります。
学生時代の教科書や参考書
新しい知識に触れるワクワク感
静かな時間に没頭した読書体験
こうしたポジティブな記憶が無意識のうちに呼び起こされ、
新品の本の匂い=心地よい、安心できる、という感情が形成されていきます。
「本の匂いフェチ」は科学的にも不思議じゃない
実際に、海外では
「Bibliosmia(ビブリオスミア)」=本の匂いを愛する嗜好
という言葉が存在します。
これは決して珍しい嗜好ではなく、
匂いの成分が明確に説明できる
嗅覚が感情や記憶に強く影響する
本という文化的・知的体験と結びついている
という点から見ても、「本の匂いが好き」という感覚はごく自然なものです。
新品の本と古書で匂いが違う理由
本の匂いといっても、新品と古書では大きく異なります。
新品の本
インクや接着剤由来のVOCが中心
クリーンで少し甘い香り
「これから始まる物語」を感じさせる匂い
古書・古本
紙の劣化によって生じるバニリンなどの成分
木やバニラに近い、深みのある香り
時間の積み重ねを感じさせる匂い
どちらが好きでも、それは嗜好の違いであり、
本質的にはどちらも科学的に説明できる香りです。
紙の本が愛され続ける理由のひとつ
電子書籍が普及した現代でも、紙の本が根強く支持される理由のひとつに、
この「匂い」という五感の体験があります。
ページをめくる音
指先に伝わる紙の感触
そして、新品の本の匂い
本は情報を得るための道具であると同時に、
五感で味わう体験型メディアでもあるのです。
読者へのメッセージ
新品の本の匂いに惹かれる感覚は、あなたの感性が豊かな証拠かもしれません。
そこには科学的な理由があり、記憶や感情と結びついた、人間らしい反応があります。
忙しい日々の中で、本を開いた瞬間の香りに少し立ち止まってみてください。
それは、知識だけでなく、心まで整えてくれる小さな時間になるはずです。

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