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8月12日「君が代記念日」— 千年の祈りを紡ぐ日本の国歌

君が代は   千代に八千代に   さざれ石の   巌となりて   苔のむすまで

8月12日は、日本の国歌「君が代」にとって特別な意味を持つ**「君が代記念日」**です。

1893年(明治26年)のこの日、文部省が訓令「小学校儀式唱歌用歌詞並楽譜」を布告し、小学校の祝日や大祭日に歌う唱歌として、『君が代』『一月一日』『紀元節』など計8曲が定められました。これにより、『君が代』は教育現場に正式導入され、日本人の生活や意識の中に国歌として深く根付くことになったのです。


歌詞の由来と意味

『君が代』の歌詞は、平安時代初期に編纂された『古今和歌集』に収められた「読み人知らず」の和歌がもとになっています。もともとは祝歌や恋歌とされる説もありますが、時代とともに長寿・繁栄・平和を祈る詩として国民に受け継がれました。

国歌 君が代

君が代は  
千代に八千代に  
さざれ石の  
巌となりて  
苔のむすまで

わずか32文字という短さながら、千年、八千年という悠久の時を経ても変わらぬ安泰を願う、非常に深い意味を持っています。世界の国歌の中でも最短クラスであり、その簡潔さの中に日本独自の美意識が宿っています。


曲の誕生と変遷

曲の誕生は、イギリスの軍楽隊長ジョン・フェントン(John Fenton、1831~1890年)が、日本に国歌がないことを残念に思い、練習生を通じて作曲を申し出たことがきっかけでした。しかし当初のメロディーは歌詞と調和せず、日本らしさにも欠けるものでした。

そこで宮内庁雅楽課の林広守(1831~1896年)が新たに作曲し、現在の荘厳な旋律が誕生します。この改訂版は、1880年(明治13年)11月3日の天長節(当時の天皇誕生日)に宮中で初めて演奏されました。

長く国歌として扱われてきた『君が代』は、1999年(平成11年)8月9日に制定された「国旗及び国歌に関する法」により、正式に国歌として法制化され、同年8月13日に公布・施行されました。


現代に響く「君が代」

今日、『君が代』はスポーツの国際大会や国家行事、学校の式典など、さまざまな場面で耳にします。特にオリンピックやワールドカップで表彰台に立つ日本代表選手とともに流れる君が代は、多くの人に誇りと感動を与えています。その瞬間、千年以上前に詠まれた和歌の想いが、現代の私たちの心に静かに届いているのです。


読者へのメッセージ

「君が代記念日」は、単なる国歌制定の日ではなく、日本文化の連続性と精神性を再確認する大切な日です。古の和歌が現代の国歌として歌い継がれていることは世界的にも非常に珍しく、日本文化の奥深さを象徴する貴重な事例といえるでしょう。国歌は単なる音楽や詩ではなく、国の歴史や文化、そして人々の想いが凝縮された存在です。この日をきっかけに、その歌詞や旋律に込められた意味を改めて感じ取ってみてください。千年以上前に紡がれた和歌が、今もなお私たちの胸に響くのは、そこに普遍的な祈りと誇りが宿っているからです。これから国歌を耳にするたびに、その一音一音が時を超えて受け継がれてきた物語であることを思い出していただければ嬉しく思います。

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