私たちはいま、静かなる地球の悲鳴を聞き逃してはいないだろうか。
6月17日は、「砂漠化と干ばつと闘う世界デー(World Day to Combat Desertification and Drought)」として、世界が一斉に土地の劣化と水の枯渇という深刻な問題に目を向ける日です。
この記念日は、**1994年に国連で採択された「砂漠化対処条約(UNCCD)」**に基づき、1995年より毎年開催されるようになりました。目的は明確です。世界中の人々に、土地の劣化と干ばつの影響、そしてそれにどう対処すべきかを啓発すること。
なぜこの日が重要なのか?——砂漠化と干ばつのインパクト
「砂漠化」と聞いて、ただ砂漠が広がる情景を想像するのは早計です。
実際の砂漠化とは、乾燥地域や半乾燥地域、さらには乾燥亜湿潤地域において、人間の活動や気候変動によって土壌が劣化し、生産力を失っていく現象を意味します。つまり、それは農業ができなくなり、水源が枯れ、生態系が崩壊する“生きた土地の死”なのです。
さらに、干ばつは地球上で最も死者数の多い自然災害であることをご存知でしょうか? 洪水や地震よりも、人々を長期にわたり苦しめ、飢饉や紛争、移住の引き金となる現象なのです。
データで見る砂漠化と干ばつの現実
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地球の陸地の40%がすでに乾燥地域であり、そこに住む人口は約20億人。
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毎年1,200万ヘクタール、日本の約3分の1に匹敵する面積の土地が砂漠化によって失われています。
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2050年には世界人口の半数が水不足地域で暮らす可能性があると、国連は警告しています。
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干ばつによって、毎年最大80億ドル規模の経済的損失が世界で発生していると推定されています。
これらはもはや「遠い世界の問題」ではありません。グローバルな食料危機、移民問題、さらには地政学的リスクにまで波及する“複合災害”なのです。
日本も例外ではない——“目に見えない砂漠化”の進行
「水の国」日本でも、実はすでに土地の劣化が静かに進行しています。農業用地の耕作放棄、過剰な開発による土壌流出、山林の荒廃など、**“見えない砂漠化”**が各地で観測されています。
また、**1994年の「平成の大渇水」**では、香川県を中心に深刻な断水が発生し、各地の工業や生活用水に多大な影響が出ました。水や土地の豊かさは、必ずしも「永遠」ではないという事実を、日本人も身をもって体験しているのです。
2025年、危機が加速する——国連のレッドライン
国連は2025年までに、世界人口の3分の2が水不足に直面する可能性を警告しています。干ばつの頻度は過去50年で倍増し、気候変動によってその規模と影響範囲はますます拡大しています。
こうした未来を回避するために、私たちにできることは何でしょうか?
私たちができる3つのアクション
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**水の使用を見直すこと。**シャワーの時間を短くし、雨水の再利用など、日々の意識が未来を変えます。
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**土壌を守る行動を選ぶ。**無駄な伐採のない木材製品の選択、オーガニック農法の支援など。
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**この問題を「自分ごと」として話題にする。**知識を広げ、共有することが最大の防災でもあります。
なぜ今、注目すべきか?
環境問題の多くが「見えにくい速度」で進行する中、砂漠化と干ばつは、最も緩やかで、最も致命的な現象の一つです。土地が死ねば、経済が止まり、社会が崩れ、人々は住む場所を失います。
だからこそ、6月17日は単なる記念日ではなく、「警告の日」なのです。
この日をきっかけに、地球という“唯一の居場所”をどのように守るかを、私たち一人ひとりが再認識する必要があります。
読者へのメッセージ
あなたの毎日の行動が、未来の地球に大きな差を生みます。私たちは大きな国際機関でも政府でもありませんが、“考え”“選び”“伝える”ことは、確実にこの問題に対する一歩となります。静かに進行するこの危機に、耳を澄ませてみませんか?
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