長野県の小諸(こもろ)市に佇む老舗温泉宿「中棚荘(なかだなそう)」が制定した、5月19日。この日は、自由律俳句の巨匠・**種田山頭火(たねだ さんとうか)**が1936年(昭和11年)にこの宿を訪れたことを記念する、「小諸・山頭火の日」です。
当時、山頭火は旅の途中で中棚荘に一泊し、湯に浸かりながら一言、こう呟いたと伝えられています。
熱い湯に浸かりながら、酒が飲めるのがいい
この飾らない言葉には、山頭火の詩情と旅人としての人生哲学が凝縮されています。五・七・五に縛られない自由律俳句のように、彼の言葉もまた、枠にとらわれない人生の豊かさを感じさせてくれます。
文学と歴史が息づく「中棚荘」の魅力
中棚荘は、ただの温泉宿ではありません。敷地内には、山頭火の足跡を記念した句碑が建立されており、訪れる者に詩人の残した温もりと余韻を届けています。
さらにこの宿は、明治の文豪・**島崎藤村(しまざき とうそん)**がかつて滞在したことでも知られています。島崎藤村の代表作『千曲川のスケッチ』にも描かれたこの土地は、信州文学の舞台としても価値の高い場所です。
心も体も癒す「初恋りんご風呂」
近年では、中棚荘の名物として**「初恋りんご風呂」**が話題を集めています。長野県特産のりんごをふんだんに浮かべた浴槽は、まるで詩のような美しさ。湯けむりと共に立ち上る甘酸っぱい香りが、訪れる人々の記憶にやさしく残ります。
この「初恋りんご風呂」は、島崎藤村の名作『初恋』の世界観を湯で再現したような演出でもあり、文学と温泉が融合する極上の体験といえるでしょう。
なぜ知っておきたい記念日なのか?
「小諸・山頭火の日」は、単なる記念日ではなく、旅・俳句・文学・温泉文化という日本の豊かな要素が交差する一日です。中棚荘は、時代の波に飲み込まれることなく、静かに文学の火を灯し続けています。
観光地としても、歴史的・文化的背景を持つ温泉宿としても、また現代人の癒しの空間としても、その価値は群を抜いています。
読者へのメッセージ
5月19日は、日々の喧騒から少し離れ、旅と俳句に想いを馳せてみるにはぴったりの日です。もしあなたが小諸を訪れる機会があるなら、中棚荘の湯に浸かりながら、静かに俳句の一句でもひねってみてはいかがでしょうか。
コメント
コメントを投稿