スキップしてメイン コンテンツに移動

12月28日 「御用納め・仕事納め」― 日本人が「一年の区切り」を大切にしてきた理由 ―

御用納め・仕事納めのオフィスを背景に、サイドテールの茶髪でレディーススーツを着た清楚で癒し系の日本アニメ調オフィスレディを横長構図のthree-quarter viewで描いたデジタルイラスト

御用納め・仕事納めとは何の日?

御用納め(ごようおさめ)とは、官公庁や公的機関において年内の業務を終える日を指す言葉です。現在の日本では、原則として12月28日が御用納めと定められており、この日をもって行政機関は年末年始の休業期間に入ります。

一方、仕事納めは主に民間企業や個人事業主が使う表現で、年内最後の営業日・業務日を意味します。
両者は使われる場面こそ異なりますが、どちらも「一年の仕事を締めくくる節目の日」という点では共通しています。


「御用納め」という言葉が持つ重み

「御用」とは、もともと朝廷・幕府・藩などに仕える公の務めを意味する言葉でした。
そのため御用納めは、

公の仕事を無事に納め、新年を迎える準備に入る日

という、非常に格式と歴史を感じさせる表現です。
単なる業務終了日ではなく、「社会全体として一年を締める日」という意味合いが込められています。


江戸時代から続く御用納めの由来

御用納めの文化は江戸時代に確立されたといわれています。

当時の幕府や諸藩では、年末になると

  • 公文書や帳簿の整理

  • 武具や道具の手入れ

  • 城や役所の清掃

  • 年始行事や儀式の準備

などを行い、年神様を迎えるための期間に入っていました。
仕事に明確な区切りをつけ、心身と環境を整えて新年を迎える――
この考え方は、現代の日本人の年末年始の過ごし方にも深く根付いています。


御用納めと仕事納めの違い

似ているようで、使い分けられてきた両者には明確な違いがあります。

御用納め

  • 官公庁・自治体など公的機関で使用される

  • 公の務めを年内で終えるという伝統的な意味合い

  • 江戸時代から続く歴史的背景を持つ

仕事納め

  • 民間企業や個人事業主が使用する一般的な表現

  • 年内最後の業務日・営業日を指す実務的な言葉

  • 業種や企業ごとに日付が異なる場合がある

現在では、官公庁の御用納めの日程に合わせて、民間企業も仕事納めを設定するケースが多く見られます。


仕事納めの日付はどう決まる?

通常、御用納め・仕事納めは12月28日とされています。
ただし、この日が土曜日または日曜日にあたる場合は、直前の金曜日が仕事納めとなるのが一般的です。

  • 12月28日が土曜日の場合 → 12月27日(金)

  • 12月28日が日曜日の場合 → 12月26日(金)

2025年(令和7年)の仕事納め

2025年は12月28日が日曜日にあたるため、
12月26日(金)が仕事納めとなります。

毎年微妙に日付が変わるため、年末になると「今年の仕事納めはいつか」を確認する文化が根付いているのも、日本らしい特徴といえるでしょう。


御用始め・仕事始めはいつ?

年が明けると、通常は1月4日

  • 官公庁では「御用始め

  • 民間企業では「仕事始め

とされています。
新年最初の業務日として、気持ちを新たにスタートする重要な日です。


仕事納め式・仕事始め式という文化

官公庁や企業によっては、年末に仕事納め式、年始に仕事始め式が行われる場合もあります。

  • 仕事納め式

    • 一年の労をねぎらい、業務を締めくくる行事

    • 組織の代表や上司からの挨拶が行われることが多い

  • 仕事始め式

    • 新年の方針や目標を共有する場

    • 組織としての方向性を確認する意味を持つ

一方、近年は働き方改革や多様なライフスタイルの広がりにより、
年末年始に連続休暇を取りやすくする目的で、これらの式を廃止・簡略化する動きも進んでいます。


なぜ12月28日が選ばれたのか

12月28日が御用納めの日とされてきた背景には、日本独自の縁起文化があります。

  • 「28」は「末広がり」を連想させる縁起の良い数字

  • 29日は「二重苦」を想起させるため避けられた

  • 30日・31日は年越し準備のために残された

縁起と実務の両面を考慮した結果として、12月28日が定着したのです。


現代における御用納め・仕事納めの意味

働き方が大きく変化した現代においても、御用納め・仕事納めは重要な意味を持ち続けています。

  • 一年を振り返り、自分の歩みを整理する

  • 心身をリセットし、新年への切り替えを行う

  • 次の一年の目標や方向性を考える

単なる「休みの前日」ではなく、人生のリズムを整えるための節目として、多くの人に意識されているのです。


海外にはあまり見られない日本独自の文化

海外にも年末休暇はありますが、
日付と意味がここまで明確に定められた「御用納め」の文化は、日本特有といえます。

これは、日本が

  • 暦を大切にする文化

  • 年中行事を生活に組み込む価値観

  • 節目を重んじる精神

を長い歴史の中で育んできた証でもあります。


読者へのメッセージ

一年の締めくくりとなる御用納め・仕事納めの日。
忙しい年末だからこそ、ただ「終わらせる」だけでなく、ここまで歩んできた自分自身をねぎらう時間を持ってみてください。

成功も失敗も、すべてが次の一年につながる大切な経験です。
仕事納めの日には少し立ち止まり、「今年もよく頑張った」と自分に声をかけてあげましょう。
穏やかな気持ちで迎える新年は、きっとこれまで以上に実りあるものになるはずです。

コメント

このブログの人気の投稿

ドイツ・バイエルンアルプス ―― ドイツ唯一のアルプスに息づく自然・文化・人の物語 ――

ドイツ南部、バイエルン州に広がる バイエルンアルプス は、アルプス山脈の北端に位置する山岳地帯です。アルプスと聞くと、スイスやオーストリアの険しい山々を思い浮かべる人も多いでしょう。しかし、バイエルンアルプスはそれらとは異なる、 穏やかさと雄大さが共存する独自の表情 を持っています。 この記事では、単なる観光情報にとどまらず、地形・自然・歴史・文化・人々の暮らしまでを横断的に掘り下げ、バイエルンアルプスという場所の「奥行き」を雑学として丁寧に紐解いていきます。 バイエルンアルプスとは何か ― ドイツにとっての「唯一のアルプス」 アルプス山脈はヨーロッパ8か国にまたがる巨大な山脈ですが、 ドイツ領に含まれるのはバイエルンアルプスのみ です。そのため、この地域はドイツ人にとって特別な意味を持ちます。 単なる山岳地帯ではなく、「ドイツのアルプス体験のすべてが集約された場所」とも言える存在なのです。 ドイツ最高峰・ツークシュピッツェ ― 国境に立つ象徴的な山 ― バイエルンアルプスの象徴が、**ツークシュピッツェ(標高2,962m)**です。これはドイツ国内で最も高い山であり、山頂はドイツとオーストリアの国境線上にあります。 晴れた日には、ドイツ・オーストリア・スイス・イタリアの4か国を望めることもあり、「国境を越える展望」を体感できる稀有な場所です。 特筆すべきはそのアクセス性です。登山鉄道や近代的なロープウェイが整備され、登山経験が少ない人でも高山の世界に触れられる点は、 安全性と観光性を重視するドイツらしさ を象徴しています。 ドイツで唯一、氷河を持つ山岳地帯 ― 気候変動を語る静かな証人 ― ツークシュピッツェ周辺には、ドイツ国内では極めて貴重な 氷河 が残されています。規模は大きくありませんが、「ドイツにも氷河が存在する」という事実は意外性の高い雑学です。 近年は温暖化の影響で氷河の後退が進み、観光地であると同時に、 気候変動を実感できる教育的な場所 としても注目されています。自然の変化を“現在進行形”で感じられる点に、バイエルンアルプスの現代的な意味があります。 アルプスなのに「なだらか」で「優しい」理由 ― 地形が生んだ独特の風景 ― バイエルンアルプスは、中央アルプスのような鋭く切り立った岩峰が少なく、 丸みを帯びた山並み が多いのが特徴です。 この地形は、...

ソールズベリー大聖堂とは何がすごいのか ― 中世の英知が800年支え続ける“奇跡のゴシック建築” ―

イギリス南部ウィルトシャー州の穏やかな平原に、空を突き刺すようにそびえ立つ建築がある。 それが**ソールズベリー大聖堂(Salisbury Cathedral)**だ。 一見すると、静かで端正な大聖堂。しかしその内部には、 建築史・政治史・技術史・芸術史 を横断する、驚くほど濃密な物語が眠っている。 この記事では、単なる観光ガイドでは語られない「なぜ今も語られ続けるのか」という視点から、 ソールズベリー大聖堂の本質に迫っていく。 イギリスで最も高い尖塔が象徴する“信仰と挑戦” ソールズベリー大聖堂最大の象徴は、 高さ約123メートルの尖塔 である。 これは現在も イギリス国内の教会建築で最も高い 記録を保持している。 注目すべきは、その高さ以上に 時代背景 だ。 尖塔が追加されたのは14世紀。当時は構造計算も現代的な建築理論も存在しなかった。 それでも人々は「より高く、より天に近づく」ことを信仰の証として追い求めた。 結果として、建物には想定以上の荷重がかかり、 内部には後世になって鉄製の補強構造が加えられることになる。 それでも尖塔は崩れなかった。 この事実そのものが、中世の職人技と信仰の強さを雄弁に物語っている。 わずか38年で完成した“統一美の大聖堂” ヨーロッパの大聖堂の多くは、建設に100年、200年とかかっている。 様式が混在し、時代ごとの変化が見られるのが一般的だ。 しかしソールズベリー大聖堂は違う。 1220年から約38年 という異例の短期間で主要部分が完成した。 その結果、建築全体は 初期イングランド・ゴシック様式 で美しく統一され、 垂直線の強調、控えめな装飾、明るく伸びやかな空間が見事に調和している。 「壮麗さ」よりも「均整と静謐」。 この美意識こそが、ソールズベリー大聖堂を唯一無二の存在にしている。 世界最古級の機械式時計が今も語る“時間の概念” 大聖堂内部には、 1386年頃に作られた機械式時計 が保存されている。 これは世界最古級であり、しかも 現在まで現存している極めて稀な例 だ。 興味深いのは、この時計に文字盤がないこと。 中世において時間とは「見るもの」ではなく「鐘の音で知るもの」だった。 祈り、労働、休息――すべてが音によって区切られていたのである。 この時計は、私たちが当たり前に使っている“時間感覚”そのものが、 歴史の中で形成...

北アメリカ・スペリオル湖|凍結する“淡水の海”が語る地球の記憶

北アメリカ大陸の北部、アメリカとカナダの国境に横たわる スペリオル湖(Lake Superior) 。 その名が示す通り、「卓越した」「比類なき」という意味を持つこの湖は、単なる世界最大級の淡水湖ではありません。 荒れ狂う海のような波、真冬に凍結する湖面、太古の岩石が露出する岸壁、そして先住民の祈り。 スペリオル湖は、**地球の時間・気候・文化が一体となって存在する“生きた自然遺産”**なのです。 世界最大級の淡水湖という圧倒的存在 スペリオル湖は、 表面積で世界最大の淡水湖 として知られています。 その広さは約8万2,000平方キロメートル。日本の北海道を上回る面積を持ち、湖というより「内陸の海」と呼ぶほうがふさわしい規模です。 さらに注目すべきは水量です。 最深部は約406メートルに達し、 地球上に存在する淡水の約10%を単独で保有 しているとも言われています。 この桁外れのスケールこそが、スペリオル湖のあらゆる現象の土台となっています。 湖なのに「海のような波」が立つ理由 スペリオル湖では、嵐の際に 数メートル級の高波 が発生します。 これは湖の面積があまりにも広いため、風が長距離を走り続け、波が十分なエネルギーを蓄積できるからです。 この仕組みは海と同じで、 強風 長い吹送距離 広大な水面 という条件が揃うことで、湖でありながら“外洋並み”の荒波が生まれます。 そのためスペリオル湖は古くから 「内海」 「淡水の海」 と呼ばれてきました。 湖畔に立つと、水平線のように水面が広がり、初めて訪れる人が海と見間違えるのも無理はありません。 一年中冷たい“氷の湖” スペリオル湖は非常に水深が深く、太陽光が届きにくいため、水温が上がりにくいという特徴があります。 真夏であっても湖水は冷たく、泳げる期間は極めて短いのが実情です。 冬になると状況はさらに厳しくなります。 沿岸部は凍結し、年によっては湖面の大部分が氷に覆われることもあります。 この冷水環境は、 独特な生態系 藻類の抑制 水質の維持 に寄与する一方で、 沈没船が驚くほど良好な状態で保存される という特徴も生み出しました。 凍結するスペリオル湖という特異な自然現象 これほど巨大で水量の多い湖が凍ること自体、実は非常に珍しい現象です。 通常、この規模の湖は熱を蓄えやすく、凍結しにくいとされています。 しかしスペリオ...

アルザス地域圏|国境が生んだヨーロッパ屈指の文化融合地

フランス北東部、ライン川沿いに静かに広がる アルザス地域圏(Alsace) 。 この地は単なる観光地ではありません。 アルザスは、 国境・言語・文化・宗教・食 が何世紀にもわたり交差し続けてきた、ヨーロッパそのものを凝縮した地域です。 一見すると絵本のように可愛らしい街並みの裏側には、国家と国家の狭間で生き抜いてきた人々の歴史と知恵が刻まれています。 アルザスは「フランスでもドイツでもある」特異な地域 アルザス最大の特徴は、 フランスとドイツの境界に位置し続けてきたこと です。 そのためこの地域は、歴史上何度も国境が書き換えられてきました。 神聖ローマ帝国 フランス王国 ドイツ帝国 再びフランス こうした変遷を経ても、住民の生活文化は単純に塗り替えられることはなく、 重なり合い、融合し、独自の形に進化 していきました。 結果としてアルザスは、 「フランス的な洗練」と「ドイツ的な実直さ」が共存する、唯一無二の地域となったのです。 消えゆく言語「アルザス語」が語る地域アイデンティティ アルザスでは、フランス語とは異なる**アルザス語(ドイツ語系方言)**が話されてきました。 現在は話者が減少していますが、これは単なる方言ではなく、 地域の記憶そのもの です。 家庭内で使われてきた言葉 市場や農村で交わされた会話 戦争と平和を越えて受け継がれた音 標識や地名に残るアルザス語は、 この土地が「単なるフランスの一地方ではない」ことを静かに物語っています。 絵本のような街並みは、実用から生まれた美 アルザスの象徴といえば、 木組みの家(コロンバージュ建築) です。 カラフルな外壁と幾何学的な木枠は装飾に見えますが、元々は 耐久性と合理性を追求した構造 でした。 木材を組み合わせて地震に強く 漆喰で断熱性を高め 寒冷な気候に適応 こうした実用性が、結果として世界中の人を惹きつける美しい景観を生み出したのです。 コルマール、リクヴィール、エギスハイムといった村々は、 「保存された観光地」ではなく、 今も生活が息づく生きた景観 です。 ストラスブールが「ヨーロッパの首都」と呼ばれる理由 アルザス最大の都市 ストラスブール は、単なる地方都市ではありません。 ここには、欧州議会をはじめとする EUの中枢機関 が集まっています。 なぜストラスブールなのか。 それはこの街が、 争いの歴史を...

12月14日 南極の日――人類が地球最果てへ到達した日、白い大陸が語る未来――

12月14日は「南極の日」。 1911年のこの日、人類はついに地球最後の空白地帯と呼ばれていた 南極点 へ到達しました。氷と沈黙に支配された極地に刻まれたその一歩は、単なる冒険の成功ではなく、 人類の知性・計画力・探究心が結実した歴史的瞬間 として位置づけられています。 南極の日は、極地探検の偉業を祝うだけの記念日ではありません。 この日は、南極という存在そのものが持つ意味―― 地球の過去を記録し、未来を映し出す場所 について、静かに考えるための日でもあるのです。 人類初の南極点到達を成し遂げた男、アムンセン 1911年12月14日、南極点に到達したのは、ノルウェーの探検家 ロアール・アムンセン 率いる探検隊でした。 彼らの成功は、偶然や幸運によるものではありません。 アムンセン隊は、 犬ぞりの積極的な採用 極寒に適した衣類の研究 食料・燃料の緻密な補給計画 など、極地環境を徹底的に分析した上で行動していました。 ほぼ同時期に南極点を目指していたイギリスのスコット隊との違いは、 勇敢さではなく、自然への理解と準備の差 だったといわれています。 南極の日は、「挑戦とは無謀さではなく、知恵の積み重ねである」という事実を、私たちに教えてくれます。 南極は「氷の大陸」であり「世界最大の砂漠」 一面が氷に覆われた南極は、水に恵まれた場所のように見えます。しかし実際には、 地球上で最大の砂漠 です。 年間降水量(雪を含む)は極端に少なく、内陸部では数十ミリ以下。 気温は氷点下が常態、湿度は低く、生命にとっては過酷そのものの環境です。 それでも南極の氷床は、何十万年もの気候情報を閉じ込めています。 氷を掘削して得られる「氷床コア」は、過去の大気成分や気温を知る 地球のタイムカプセル とも呼ばれています。 日本と南極の日――昭和基地が果たす役割 日本は1957年から南極観測を継続しており、昭和基地は国際的にも重要な研究拠点です。 気象観測、オーロラ観測、氷床変動、地磁気研究など、南極で得られるデータは、 地球温暖化や異常気象の解明に直結 しています。 南極の日は、日本が世界とともに地球の未来を見つめてきた歴史を思い出す日でもあります。 遠い極地の出来事は、決して他人事ではなく、私たちの暮らしと深く結びついているのです。 南極には「時間」という概念が曖昧になる場所がある 南極点では、...