世界標準への一歩、それは「メートル法」の導入から始まった
私たちが何気なく使っている「メートル」「キログラム」「リットル」——それらの単位は、すべてメートル法(Metric System)に基づいています。このメートル法が日本で正式に導入されることが公布されたのが、1921年(大正10年)4月11日。
この歴史的な日を記念して制定されたのが、「メートル法公布記念日」です。
しかし、なぜ日本はメートル法を導入したのか?それ以前の日本はどんな単位を使っていたのか?そして、私たちの暮らしにどう影響しているのか?この記事ではその背景を掘り下げながら、知っているようで知らない「単位の歴史」と日本のグローバル化の一端を明らかにしていきます。
尺貫法からメートル法へ:1000年以上続いた単位の革命
尺貫法とは何だったのか?
日本で長らく使われていた単位系は「尺貫法(しゃっかんほう)」と呼ばれるもので、中国から伝来し、独自に発展したものでした。
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長さ:尺(約30.3cm)、寸、間(けん)
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重さ:貫(約3.75kg)、匁(もんめ)
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容量:升(しょう)、合(ごう)、斗(と)
例えば、「一升瓶」や「一坪」など、今でも日常に残る単位がこの名残です。江戸時代から明治にかけて、商取引や建築、農業、料理のすべてがこの尺貫法を基盤に成り立っていました。
メートル法導入のきっかけは「世界との接続」
19世紀以降、日本は開国を果たし、西洋文明の取り入れを急ぎました。その中でも科学技術や工業化において、国際標準であるメートル法への移行は避けて通れない道だったのです。
1921年4月11日、日本政府はメートル法を正式に採用し、その公布を行いました。
ただし、実際に完全な切り替えが行われたのは1959年の「計量法改正」によってであり、それまでは尺貫法との併用期間が続きました。完全に社会に浸透するまでには半世紀以上を要したのです。
メートル法のルーツ:地球の大きさから生まれた単位
メートル法の始まりは18世紀末のフランス革命時。
革命政府は、それまで貴族や地域ごとにバラバラだった単位を廃止し、「誰にでも平等に、科学的で分かりやすい基準を持つべきだ」という理念のもと、新たな単位系を生み出しました。
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1メートルは、地球の北極から赤道までの距離の1,000万分の1と定義された。
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1キログラムは、水1リットル(=1000立方センチメートル)の質量と定められた。
これはまさに「地球全体を基準にした、グローバルな単位」。この視点が、世界標準としてのメートル法の信頼性と普遍性を支えているのです。
メートル法の普及はなぜ難しかったのか?
日本では長い年月をかけて尺貫法が生活に根付いていたため、突然の切り替えは混乱を招きました。
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商人:「一升瓶をリットルで売る?ピンとこない」
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建築:「一間(けん)をメートルに変換?現場で混乱する」
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庶民:「畳のサイズが変わる?暮らしが乱れる」
こうした“感覚のずれ”が、移行の最大の障壁でした。
政府は啓発ポスター、学校教育、業界団体との調整など、さまざまな取り組みを行いましたが、地域や職種によっては今なお尺貫法が使われている場面もあります。
現代社会に息づく「二つの単位」
2025年現在、日本は正式にはメートル法を採用しており、教育や科学、法制度、工業製品などはすべてメートル法に準拠しています。
しかし、文化としての尺貫法は消えておらず、以下のような例が日常に残っています。
分野 | 使用される単位 | 具体例 |
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不動産 | 坪(つぼ) | 「30坪の一戸建て」など |
酒類 | 升(しょう)・合(ごう) | 「一升瓶」「五合炊き炊飯器」 |
建築 | 間(けん)・尺(しゃく) | 畳一畳の大きさ、柱の間隔 |
これはまさに、日本が伝統と近代化を並立させてきた歴史の証といえるでしょう。
なぜ読むべきか?
「メートル法公布記念日」は単なる記念日ではありません。それは、日本が世界の標準と接続されるための大きな一歩を踏み出した日であり、同時に長い歴史と文化をいかにして尊重しながら変革していくかという葛藤の象徴でもあります。
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グローバル化とローカル文化のせめぎ合い
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単位という“見えないルール”の社会的影響
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普段見落としがちな暮らしの仕組みの深さ
これらを知ることで、私たちの日常がいかに「計量」というシステムに支えられているかが見えてきます。
読者へのメッセージ
4月11日の「メートル法公布記念日」は、単位が変わっただけではなく、日本が国際社会の一員として大きな一歩を踏み出した歴史的瞬間でもあります。
一見地味に見える「単位」ですが、その背後には文化、社会、政治、技術といった複雑な要素が絡み合っています。
次に「一升瓶」や「一坪の土地」という言葉を耳にしたとき、その裏にある物語を思い出してみてください。
そして、私たちが当たり前のように使っている「メートル」や「キログラム」に、ほんの少しの敬意を払ってみてはいかがでしょうか。
それでは、また次回の雑学でお会いしましょう!
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