初夏から夏にかけて、そうめんや冷奴の上に添えられた「みょうが」を見かける機会が増えてきます。
独特の香りとシャキシャキとした食感が魅力のみょうがは、日本の食卓に欠かせない香味野菜のひとつです。
そんなみょうがにスポットを当てる記念日が、6月13日の「いいみょうがの日」です。
この記念日は、高知県園芸農業協同組合連合会(高知県園芸連)が制定しました。6月がみょうがの旬を迎え、生産量が増える時期であることと、「い(1)いみ(3)ょうが」という語呂合わせが由来です。
一年を通じて栽培が盛んな高知県産みょうがの魅力を全国に広く伝えることを目的としており、一般社団法人・日本記念日協会によって認定・登録されています。
普段は料理の脇役として活躍するみょうがですが、その歴史や文化をたどると、意外な伝説や知られざる魅力が見えてきます。
今回は、思わず誰かに話したくなる「みょうが」の奥深い世界をご紹介します。
「みょうがを食べると物忘れする」は本当?
みょうがにまつわる話として最も有名なのが、
「みょうがを食べると物忘れする」
という言い伝えです。
昔、祖父母や親からそう聞かされたことがある人もいるかもしれません。
しかし結論から言うと、
みょうがを食べても物忘れしやすくなることはありません。
現在の栄養学や医学において、そのような作用は確認されていません。
ではなぜ、このような言い伝えが生まれたのでしょうか。
その由来は仏教説話に登場する「周利槃特(しゅりはんどく)」という人物にあるとされています。
彼は非常に物覚えが悪く、自分の名前さえ忘れてしまうほどだったと伝えられています。そこで首から名前を書いた札を下げていましたが、亡くなった後、その墓から生えた植物が「茗荷(みょうが)」と呼ばれるようになったという伝説があります。
この話が広まるうちに、
「茗荷=物忘れ」
というイメージが定着し、
「食べると物忘れする」
という俗説へと変化したと考えられています。
実際にはまったく逆で、みょうがの爽やかな香りは気分をリフレッシュさせる存在として親しまれてきました。
私たちが食べているのは「花」だった
みょうがについて意外と知られていないのが、食べている部分です。
多くの人は茎や葉の一部だと思いがちですが、実は違います。
私たちが食べているのは、
花が咲く直前の「花穂(かすい)」
です。
あの淡い紅色の部分は、花を包む苞(ほう)が何枚も重なったもの。
収穫せずにそのまま育てると、中から美しい薄紫色の花が顔を出します。
つまり、みょうがは野菜というよりも、
「花のつぼみを味わう食材」
なのです。
普段何気なく食べているみょうがですが、その正体を知ると少し見方が変わるかもしれません。
日本人はいつからみょうがを食べていた?
みょうがは日本原産ともいわれるほど、日本との関わりが深い植物です。
古くから自生しており、平安時代にはすでに食用や薬用として利用されていた記録が残っています。
長い歴史の中で日本人は、
冷奴
味噌汁
そうめん
酢の物
天ぷら
炊き込みご飯
など、さまざまな料理にみょうがを取り入れてきました。
夏になると自然とみょうがを食べたくなるのは、日本人の食文化に深く根付いている証なのかもしれません。
高知県が日本有数の「みょうが王国」
みょうがの産地として特に有名なのが高知県です。
温暖な気候と豊富な日照時間を活かし、全国でもトップクラスの生産量を誇ります。
高知県ではハウス栽培技術も発達しており、一年を通して高品質なみょうがが出荷されています。
全国のスーパーで見かけるみょうがの多くが高知県産であることも珍しくありません。
「いいみょうがの日」は、そんな高知県の生産者の努力と情熱から生まれた記念日でもあります。
私たちが一年中みょうがを楽しめるのは、生産者のたゆまぬ工夫と技術のおかげなのです。
爽やかな香りの正体とは?
みょうが最大の魅力は、何といってもその香りです。
包丁で刻んだ瞬間に広がる爽やかな香りは、食欲を刺激し、料理全体を引き立てます。
香りの主成分には、
α-ピネン
ミルセン
リモネン
などがあります。
これらは森林や柑橘類にも含まれる香気成分として知られています。
だからこそ、暑さで食欲が落ちやすい夏でも、みょうがを添えるだけで料理がぐっとおいしそうに感じられるのです。
海外では「珍しい日本の味」
日本では身近なみょうがですが、海外ではほとんど流通していません。
外国人にとっては非常に珍しい食材で、
「こんな香りの野菜は初めて食べた」
と驚かれることも少なくありません。
わさびやしそと同じように、日本独自の香味文化を象徴する食材として注目されることもあります。
世界中にはさまざまな野菜がありますが、みょうがほど個性的な香りを持つ食材はそう多くありません。
私たちが当たり前に楽しんでいる味覚は、実は世界的に見ればとてもユニークなものなのです。
夏の食卓を支える「名脇役」
主役ではないけれど、いないと物足りない。
みょうがはまさにそんな存在です。
そうめんの上に少し添えるだけで香りが広がり、冷奴にのせれば風味が引き立ちます。
たった一切れで料理全体の印象を変えてしまう力があります。
映画や舞台で名脇役が作品を支えるように、みょうがも日本の食文化を陰から支えてきました。
目立たなくても欠かせない。
そんな魅力こそが、みょうがが長年愛され続けている理由なのかもしれません。
ちょっと話したくなる豆知識
みょうがは英語で「Japanese ginger(ジャパニーズジンジャー)」と呼ばれることがあります。
実際にショウガ科の植物であり、ショウガの仲間です。
ただし食べる部分は大きく異なります。
ショウガは地下茎を食べますが、みょうがは花のつぼみを食べます。
同じ仲間でありながら、まったく違う味や香りを楽しめるのは自然の不思議ですね。
読者へのメッセージ
私たちはつい、目立つものや主役ばかりに注目してしまいがちです。
しかし、みょうがのように料理を引き立てる名脇役がいるからこそ、食卓はより豊かになります。
人との関わりや日々の暮らしの中にも、同じように目立たなくても大切な役割を果たしている存在がたくさんあります。
6月13日の「いいみょうがの日」は、そんな“縁の下の力持ち”に目を向けるきっかけの日かもしれません。
いつものそうめんや冷奴に添えられたみょうがを味わいながら、その爽やかな香りとともに、身近な人や支えてくれている存在への感謝を思い出してみてはいかがでしょうか。
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