フィンランド文学といえば、『ムーミン』シリーズの作者トーベ・ヤンソンを思い浮かべる人も多いかもしれません。しかし、フィンランドのファンタジー文学は、近年ますます世界中で注目を集めるようになっています。その中でも特に注目すべき作品が、トゥーテッキ・トロネンによる『モンスター・ナニー(原題:Mörkövahti)』です。
本作は36カ国以上で翻訳され、ベストセラーとなったファンタジー小説であり、リドリー・スコット監督による映画化も決定している話題作です。子供向けの物語でありながら、大人も十分に楽しめる奥深い内容と、フィンランドの豊かな文化を背景にした独自の世界観が特徴です。
本記事では、この『モンスター・ナニー』のストーリー、登場キャラクター、テーマ、さらにはフィンランド神話との関係について詳しく掘り下げ、その魅力を徹底解説します。
物語のあらすじ──毛むくじゃらのナニーがやってきた!
物語の主人公は、フィンランドに住むヘッレマー家の三兄妹です。
- ヒッラ(11歳) …しっかり者の長女で、弟妹の面倒をよく見る。
- カーポ(9歳) …好奇心旺盛な次男。
- マイッキ(6歳4か月) …まだ幼く、甘えん坊な末っ子。
ある日、母親が「ラップランドへの“いやしの旅”」に当選し、2週間の間、家を空けることになります。しかし、子供たちだけで過ごすのは無理ということで、母親は子供たちの世話をするナニー(乳母)を雇うことにします。
ところが、やってきたのは普通のナニーではなく、毛むくじゃらで大きな体をした“モンスター”だったのです!
このモンスター・ナニーの名前はルートヴァ(Ruutva)。
見た目は怖くて巨大ですが、実は心優しく、子供たちとすぐに打ち解けていきます。ルートヴァは決して普通のナニーではなく、魔法の力を持ち、驚くべき秘密を抱えた存在でした。
この不思議なナニーとの出会いによって、ヘッレマー家の三兄妹の夏休みは予想もしなかった大冒険へと発展していくのです。
登場キャラクターの魅力
◆ ルートヴァ(モンスター・ナニー)
巨大で毛むくじゃらのモンスター。見た目は恐ろしいが、非常に優しく賢い存在。フィンランドの伝説的な妖精や精霊に似た存在であり、物語の鍵を握るキャラクター。子供たちにとっては最初は謎の多い存在だが、次第に大切な友人になっていく。
◆ ヘッレマー家の三兄妹
それぞれ個性的な性格を持ち、時には意見がぶつかり合うこともあるが、困難な状況では力を合わせて立ち向かう。特に長女のヒッラは物語を牽引する重要な役割を果たす。
◆ 母親
自由奔放な性格で、突然の旅行を決行する。物語の最初ではあまり登場しないが、彼女の決断がすべての始まりとなる。
◆ 不思議な森の住人たち
物語が進むにつれ、フィンランドの伝説に登場するような不思議な生き物たちが次々と登場する。彼らは時に敵となり、時に味方となる。
テーマとメッセージ──北欧のファンタジーが伝えるもの
1. 家族の絆と成長
『モンスター・ナニー』は単なる冒険物語ではなく、家族の絆の大切さを描いた作品でもあります。
最初は「頼りない子供たち」として描かれていた三兄妹が、モンスター・ナニーとの生活を通じて成長し、自立していく姿は感動的です。
2. フィンランド神話と伝承の影響
物語には、フィンランド神話や北欧の伝説的な生き物たちが影響を与えていることが感じられます。
特にルートヴァの存在は、フィンランドの伝承に登場する**「トロール」や「精霊(ヒィシ)」**に通じるものがあり、ムーミンシリーズにも見られる北欧特有の幻想的な世界観を持っています。
3. 自然と共生するフィンランドの文化
フィンランドの森や湖、動物たちが物語の重要な背景として描かれており、自然と共生するフィンランドの文化的な価値観が随所に表現されています。
また、子供たちが冒険を通じて自然の大切さを学んでいく過程も印象的です。
なぜ読むべきか?
『モンスター・ナニー』は、単なる児童文学ではなく、大人も楽しめる奥深いファンタジーです。
- 北欧神話やフィンランドの伝承に興味がある人におすすめ!
- 心温まるファンタジーが好きな人にぴったり!
- 子供の成長や家族の絆を描いた物語を求める人に最適!
- 映画化も決定しており、これからさらに話題になること間違いなし!
これまでにない新しいフィンランド発のファンタジーとして、ぜひ手に取ってみてください。
読者へのメッセージ
北欧の森には、昔からさまざまな精霊や妖精が棲んでいると信じられてきました。
その伝説のエッセンスを現代の物語に落とし込んだ『モンスター・ナニー』は、まるで魔法のような読書体験を提供してくれます。
この冬、暖かい部屋でホットドリンクを片手に、モンスター・ナニーの不思議な世界に飛び込んでみませんか?
大人も子供も、一度ページを開けば夢中になること間違いなしの物語です。
それでは、また次回の書評でお会いしましょう!
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